【阪本研究所】 SK laboratory 代表 Kazuyoshi Sakamoto

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【国際取引の英文契約書の注意事項】

国際取引の英文契約の注意事項について



企業においても、外国企業との技術提携、著作権契約など英文契約書に触れる機会が急に多くなっていきている。




下記は、英文契約書に関する注意事項である。 


 
外国企業と取引をする場合、単に契約すればOKというわけではない。
 
例えば、中国との契約に関しては、通常の契約書の感覚で書類を作ると破談になる。
日本人の感覚では契約書において、貸し手は「甲」と表現するのが普通である。「乙」を差別しているわけではない。


しかしながら、中国ではそうではない。


友好を示すために日本で作成した契約書で、たとえ中国が借り手であっても、中国を「甲」と表現しなければ友好でないと受け取られないのだ。


イスラム圏の会社と契約するとき「金利」の概念を導入してはいけない。神は裕福なものから裕福でないものに施しをするのが普通であるという習慣がある。


そもそも、「お金を取る」ということさえダメかもしれないのである。ましてや支払いが遅れた場合に金利を取るとはなにごとか!となるのだ。従って、欧米や日本では、想像できない契約書になる。しかし、この様な文化だから仕方ない。頭をひねって、そこで日本の商社は、「手数料」という名目で金利を補償する。
 
文化の違いであり、どちらの国が良いとか悪いとかということではない。日本式、米国式の契約書が存在するのと同じ。



よくある質問;

 


質問1. 中国を含め、アジアの各国と契約書を交わす場合、英語の契約書である。それはなぜか?


回答: 言葉の問題というより、弁護士の数の問題。米国の弁護士の数は世界一である。日本の弁護士数とは、大きく違う。日本では司法試験の合格者数は毎年一定でどんなによい成績であっても人数で切られる。
つまり、日本の弁護士の数が少ないため、日本語の契約書が作れないというのも一因であると言われている。


契約書は紛争をなくすために作られ、紛争が起きたときこれを根拠に戦う書類。その戦う場所(裁判するところ)も英語圏(例えば、シンガポールの裁判所)になる。
その場所で米国弁護士を中に立ててシンガポールの裁判所で争うのである。


従って現状では、アジア諸国との契約は米国弁護士が握っている状況。つまり、米国弁護士の考え(コモンロー:判例法)がアジア諸国における契約の標準になっているのである。 


1991年のソ連崩壊にともなう債権の回収も、米国の法律事務所が担当している。日本の商社連合の代理人は米国のA法律事務所、旧ソ連(ロシア)の代理人も米国のB法律事務所である。米国の弁護士が、両者からがっぽりと手数料を取るシステムが出来上がっている。 


過去からずっとアジア諸国の契約は、既に米国弁護士に支配されているのだ。
 
 



ベンチャー企業の事例:日本のソフトウエアのベンチャー企業の例


日本のソフトウエアのベンチャー企業が、外国人のための日本語教育ソフトを開発した。優秀なソフトであった。しかし、海外(アジア、欧米地域向)で販売となると各国用の契約書の作成、各国の商標の取得に時間を有し、結局6ヶ月を費やした。


この間に資本金を食いつぶしてしまって、とうとう会社を整理する事態となってしまったのである。


一番の誤算は、英文契約書であったと脱サラし、このベンチャー企業を立ち上げた元商社マンは回想する。「英文契約書にこれほど時間を取られるとは思わなかった。」と言う。


大企業や商社は法務部や文書課などが契約書関係を一手に引き受け、契約書作成専門の担当者がいる。


しかし、小さなベンチャー企業だとその様な担当者はいないのが普通。契約にどれだけ時間を取られるか初めから分っていれば専門の人を雇っただろうが、元商社の営業マンは、そんなことまで予想しなかった。これがベンチャー事業の最大の失敗原因であるとその元商社マンは語った。
 
 日本においてはそれほど重要視されないが、契約書作成、締結までは慣れないと時間もしコストもかかる。
 



質問2. 法律用語「契約」とは何か? 



回答: 合意(約束)である。しかも裁判所が強制執行できる約束である。


例えば、デートの約束を破ったからと言って裁判所は強制執行してくれない。従って、デートの約束は「契約」ではない。 


「契約」をGoogle翻訳すると「 Agreement」 と 「Contract」が表示される。
厳密な意味で、「Agreement」では強制執行してくれないので、これは「契約」でない。「Contract」の場合は、裁判所が強制執行してくれる。
  


 
質問3. 法律用語「調停」(日本)と「Conciliation」(英語)の違いは?


 *「調停」Conciliationとは、英語:イギリスで発達した判例に基づく法律、コモンロー、における用語。

*コモンロー: 一般的慣習法の意味で、17世紀にイギリスの「権利の請願」の基本理念となった法思想。 common law とは、一国に「共通する法律」の意味で、イギリスにおいて生まれた概念。



回答: 日本の調停は裁判所でする。裁判所以外ではしない。 


コモンローの「Conciliation」は裁判所以外でもできる調停である。
 


 
質問4. A shall assign, transfer and sell this product to B.
という様に、なぜ同じ様な言葉(assign, transfer, sell)を並べるのか?
どれも「譲渡する」という意味。 




回答:確に語源を調べると同じことばでない。


assign は目に見えないもの(例えば特許、ソフトウエアなどの知的財産権)の譲渡、transferは目にみえるもの(装置など)の譲渡、sellはtransferとassignの両方の意味での譲渡を指す。
  


 
質問5.  Subject to the terms and conditions hereof, A may sell this Product to the other party. 
という様に terms, conditions という同じ意味(「条件」と訳せる)の単語を並べているのはなぜか? 


回答: この場合は歴史的背景による。民族、部族により同じ意味で違う言葉を使用していたので、同じ意味でも両民族の単語を列挙することにしたのが現在の契約書の書式に残っているため。
尚、hereofは普通「本契約」(of this agreement )と訳す。Productの P が大文字なのは契約書のどこかで定義されているからであり、その定義された製品(Product)を指す。
  



日本人と欧米人の契約に対する深層心理比較



◆日本人は契約書を結婚の様に考え、如何に上手くやって行くかを第一として書く。


「問題が発生したら両者協議の上解決する」などという文章が契約書に書かれる。(一般論) 一方欧米人は、契約を離婚の準備の様に考え、如何に離婚するかを考えて起草する。
それゆえ「問題が発生したら両者協議の上、、、」などという文章は意味がない。如何に問題を発生させないようにするか、問題が発生したときどうするかを契約書に書く(問題発生を予測してその解決方法をあらかじめ契約文に書く)。
  


◆日本人は契約を「神」と結びつけない。 


 欧米人は人と人の契約を守るということは、「神」との契約を守ることと考える。従って契約書にGod(神)という単語を使うこともある。無神論者は差別さえされる。
 
◆ 日本人は契約(法律などの約束ごと)よりも恥とか世評の方が強い拘束力を持つことが多い。
 一方、欧米人は約束は守られるべきものという思想が徹底している。
 
◆ 日本人は感情的、情緒的であり、契約(書)を「契り」の感覚でとらえ、定量ならびに明確化に消極的である。 


 欧米人は論理的であり、契約(書)を個と個の対立としてとらえ、定量化ならびに明確化に積極的である。権利義務の範囲を明確にする文書化の習慣がある。
 
◆ 日本人は単一民族・農耕民族であり、ものごとの円満解決を優先する風習があり、個の主張は後ろに追いやられる傾向にある。 


 欧米人は民族混合社会・狩猟民族であり、防衛本能や情報分析能力にたけ、小学校でも積極的主張の教育がなされ、個の主張が前面に出る傾向にある。
 
◆日本人は契約書でもホンネとタテマエを使い分ける。
  欧米人は「はじめに言葉ありき」に象徴される聖書の思想があり、約束文言に対する神聖視を有す。
 


質問6. あなたはT社の特許に基づく特許実施権許諾契約交渉を米国で米国のG社と進行中である。G社が最終段階で以下の条項を設けたいと提案した。この条文案に何か問題はないか? 


T shall grant to G an exclusive license to make, sell, distribute and export products newly developed later under T's patents and know-how on terms to be separately negotiated between the parties hereto. 


回答: negotiateは契約書の法律用語として不適切。契約の中に契約でないもの(negotiate)が入るのはおかしい。


 
質問7. あなたはT社の海外取り引きの担当者としてカリフォルニアに出向き、カリフォルニア州法人C社とT社製品Xの輸出売買契約の交渉をしている。近い将来T社は製品Xの改良品を開発していると述べたところC社担当から以下の契約条項の追加申し入れがあった。この条文案に何か問題はないか? 


T shall sell to C a product newly developed after execution hereof, and C will purchase it a price which will be agreed between the parties hereto at the time when the new product is developed; provided, however, that said price shall range between $20.00 and $25.00. 


A7. T社に対してshallでC社に対してwillでは不公平。契約書の基本はshallとwillはどちらかに統一すること。混ぜると両者を違う意味に解釈される恐れがある。


*英和辞典で引くと同じ和訳で載っている場合が多いので注意が必要。意味は大きく異なります。下記エピソードをご参考に。 
  



Willとshall 契約交渉におけるエピソード


 日本企業と米国企業との業務提携契約の話である。日本人は英文契約書に慣れていないので米国企業に契約書を起草させ、これをたたき台にして契約交渉をするという方法がよくとられる。 
米国企業から提示された契約書のたたき台を見ると、日本企業の義務に関するところがすべてshall、米国企業の義務に関するところがすべてwillが使用されていた。


日本企業の交渉担当は
 「willとshallが使い分けられているようですが、意味が違うのですか」 
と米国企業弁護士に質問したところ、 


 「同じ意味です」
という回答であった。


そこで日本企業の交渉担当は
 「それでは、契約書のWillをshallに、shallをwillにすべて書き換えてください」
と米国企業弁護士に言ってその日の交渉が終了した。 


 次の交渉用の訂正された英文契約書を見ると、willはすべてshallに書き換えられていた。willはどこにも使われていなかったのである。
 
 英文契約書の基本を知らないと恐いという典型的な話である。
  


質問8. 契約書は後に争いがないように日常用語なら1行ですむところを懇切丁寧に記述している。比喩的な例であるが、 I give you the apple. (私はあなたにリンゴをあげる。)
を契約書の文章にするとどうなるだろうか? 


注意:これはあくまで例。普通この様なContractはないです。 


回答: I hereby give and convey to you all my estate and interests, rights, title, claim and advantages to and in said apple, together with its rind, skin, juice, pulp and seeds and all rights and advantages with full power to bite, cut and otherwise eat the same, or give the same away with or without the rind, skin, juice, pulp or seeds, anything hereinbefore or hereinafter or in any other deed, or deeds, or instruments of whatever nature or kind whatsoever to the contrary notwithstanding.
という様に表現する。(anything以下はなくてよい)


「give」とはどこまでを指すのだろうとか、これもgiveの範疇なのかなどという疑念が出ない様に徹底的に書くのである。
 



曖昧でない言葉で正確に


法律文書は互いに考えていることを曖昧でない言葉を使って正確に記述する。


例えば「3月31日から4月30日」という日本語表現を英語で書くと from March 31 to April 30であるが、このままだと4月30日が含まれるのか否かという争いが発生する恐れがある。


これを避けるために通常、
from March 31 to April 30 both inclusive
などと表現する。


「犬猫などの動物」という日本語を英語で
animals including dogs and cats
と表現すると、犬猫以外の動物は入らないと解釈される恐れがあり、争いの種を残すことになる。


従って、
animals including but not limited to dogs and cats
のように表現する。長い文になるが、契約書としては正確な表現になる。
 
  


 

国際交渉術


 互いに文化が違うので困難を伴う。基本としては、交渉(または契約書)が最終的にどのような落としどころになるかを「読む」ことが大切。その「読み」と「準備」が重要である。 


 基本の流れは、下記の10段階。
 
1.  何を交渉するか 担当当事者の権限移譲を明確に 


2.  準備段階(事実関係の整理と把握) 詭弁ではダメ


 a.準備 事前に相手を知り、強みと弱みを知っておく。事前徹底調査の励行。 


3.  交渉マップの作成


4.  予備交渉(交渉チームの結成) トップに会う、百聞は一見に如かず 


5.  本交渉
 できるだけ相手に口火を切らせ、出方を見てから交渉を始める。
 目標は高く、しかしあくまで現実的に。 


6.  合意点と合意困難点の整理
 まず相手側の要求を満たす「協力」を。 


7.  交渉はどこまで妥協するか(譲って 得 取る)
 必ず代替え案を用意しておく。
 これだけは譲れないという一線を明確にしておく。


 交渉は単なるプロセス、一回かぎりではない。相手の要求に注意深く耳を傾け、合意点のすばやく把握する。
 一回限りの交渉のためでなく、長い付き合いをするつもりで関係作りに励む。時には場所を変えて交渉する。会社の事務所ではなくレストランなど雰囲気を変えてみる。


8.  契約書の原案・作成と調印 


9.  契約の履行と不履行 


10. 紛争の処理 (契約後、何も起こらなけれなこの処理はない。)
 
と、基本の流れはこの10。
 



カウンターオファー


法律上のQ&Aである。


米国は訴訟社会、米国やオーストラリアで生活する場合の参考にもなる。


下記の問に対して、a b c dから適切な回答を選ぶこと。 


問:
Alex said to Barry, "I offer to sell you this briefcase for $30."
Barry responded, "I offer you $25 for it."
Alex said, "No, that is not enough."
Barry then said, "O.K., I accept your offer."
Is there a contract at this point?
 
a. Yes, there is a contract.
b. No, because there is no consideration.
c. No, because the offer was not in writing.
d. No, because the offer had terminated before Barry's attempted acceptance.
 
回答と解説 
a:日常会話ではこのように解釈される場合が多々あるが、法律上これを正解としないので✖。
b:約因(consideration)はある。売買の話であるから疑問の余地なし。
c:土地の取引きとか500ドル以上の物品でないから契約書(紙)は必要としない。
d:正解。カウンターオファー($25)が出された時点で、前のオファー($30)は消滅する。よってこの問いの時点で法律的に契約(contract)はない。
 
  


米国弁護士による恵文契約書のチェック


 米国弁護士にとって英文契約書のチェックはたいくつらしい。日本の大手弁護士事務所に就職したハーバード大学出の弁護士は2年で帰国してしまったという。
日本での待遇は申し分なく、住居は家賃百万円/月のマンションが無償提供、給与は普通のサラリーマンの倍以上。
しかし将来を考え、このままではキャリアアップ出来ないと判断して帰国した。代わりにまた新任の米国有名大学出たての弁護士が着任したそうだ。 


 しかしながら、日本人技術者にとって英文契約書のチェックはそんなに簡単でない。外国語と母国語の違いに加えて、契約書に対する見方が違うらしい。ある米国法律家に、「なぜこんなに同じようなどうでもよいこと?を長々書くのか」と質問したところ不思議そうな顔をしていた。
 
 
質問9. 以下はあるジョイントベンチャーの契約書の一部である。 

 One of the directors nominated by ABC shall be appointed Chairman. The prime function of the Chairman will be to preside over Board Meetings of the Directors and to appoint the General Manager from the directors nominated by ABC. .......
 この条文に差別語がある。どれか? 


回答9 Chairmanである。Chairpersonとするべきなのである。(大文字になっているのは条文の最初に定義されているからである) PCも考慮することが必要。


ポリティカル・コレクトネス(英: political correctness、略称:PC、ポリコレ)とは、性別・人種・民族・宗教などに基づく差別・偏見を防ぐ目的で、政治的・社会的に公正・中立な言葉や表現を使用することを指す。
 
  


契約書作成手法


契約書作成を米国人弁護士に依頼すると、契約条件を聞いて事務所員がその契約条件に合う契約書の雛形をパソコンから出力する。実に簡単でボタンを押すだけである。
有名弁護士に依頼しても、本人はけっしてこの様な仕事はしない。すべて所員にまかせる。 


 日本人(日本企業)は作成された契約書に対してほとんど質問しないという。外国の企業は相当しつこく質問してくる。外国人が作成された契約書の文章は格調が高い。しかも、ところどころにフランス語も散りばめられている。このフランス語を使うことに意味があるのかと米国弁護士に質問したところ、ただカッコよいだけだという。


しかし、弁護士は格調・威厳のために使うという。そういえば日本の特許明細書にも独特な言い回しがあった。発明の中身がどうであれ、この独特な言い回しを使うと格調高い発明に変身するという錯覚にとらわれる。



国際取引の英文契約書に関して、参考記事👇
【国際売買契約書】



👇【Supply and Purchase Agreement】



👇【ノウハウ・ライセンス契約書】




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代表 Kazuyoshi Sakamoto
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