インコタームズ(Incoterms)に関する売主と買主の費用・危険負担表
インコタームズ(Incoterms)に関する売主と買主の費用・危険負担表
輸出入において何も問題が発生しなければ、難しいことではありません。発注さえすれば後は乙仲業者が運んでくれるのですから、国内の宅配便と同じ感覚です。
しかしながら、実際は、遠く離れた国と国との海上輸送、しばしば問題が発生します。多くは発注した商品の「遅れ」と「破損」です。
このとき、初めて売買契約書ではどうなっていたか、買契約書の約款は?保険の範囲はどこまで?と一旦、問題が起これば一挙に業務が増え、日常の自分の仕事を圧迫します。何も問題が発生しなければ、しなくてもよい仕事です。
しかしながら、問題が発生したので、契約書や書類の隅々まで読むんで確認することになります。
危険負担の面からみたインコタームズ
EXW,FOB,CIFなどのインコタームズ用語の意味を覚えることも重要ですが、危険負担の面からインコタームズを理解する必要があります。
2000年インコタームズの内容
まず、2000年インコタームズは下記の通りとなっています。
① EXW(EX Works)
輸出国(積み地)の工場で貨物を引き渡す条件のこと。引渡した時点で危険負担は売主から買主に移る。
② FCA(Free Carrier)
運送人渡し条件のことで、売主の指定又は買主の指定した場所や運送人に貨物を引渡す。このときに費用負担と危険負担が移転する。運送人とはコンテナ船の場合のCY(コンテナ・ヤード)やCFS(コンテナ・フレート・ステーション)での引渡しが該当し、在来船用のFOBと対応している。
③ FAS(Free Alongside Ship)
船側渡しのことで、輸出港に停泊中の本船の側面につけたときに費用負担と危険負担が売主から買主に移転する。一般的な貨物ではなく木材などのような場合に使用されている。
④ FOB(Free On Board)
本船積込渡しのことで、費用負担は本船に積み込むまで売主負担。貨物が本船舷側の欄干を通過したときに危険負担は移転する。
⑤ CFR(Cost and Freight) C&F
売主の危険負担は、本船積込渡し及び輸入港までの運賃込み価格のことで、C&Fとも表示される。但し、危険負担は、貨物を本船に積み込んだときに移転するので、FOBと同じ。
⑥ CIF(Cost, Insurance and Freight )
売主の費用負担は、本船積込渡し及び輸入港までの運賃と保険料込み価格まで。危険負担の移転は、貨物を本船に積んだときであり、FOBや(CFR C&F)と同じ。
⑦ CPT(Carriage Paid To)
運送人渡し条件における輸入地までの輸送費込み条件のこと。コンテナ船等の場合に使われる。在来船用のCFR(C&F)と対応している。危険負担は、運送人に引渡したときに移転する(FCAと同じ)
⑧ CIP(Carriage and Insurance Paid to)
運送人渡し条件における輸入地までの輸送費と保険料込み条件のことで、コンテナ船用等に使われ、在来船用のCIFに対応するものである。危険負担は、運送人に引渡したときに移転する。(FCAやCPTと同じ)
⑨ DAF(Delivered At Frontier)
国境渡し条件のことで、国境周辺の指定地で売主の費用負担は移転する。わが国、日本においては、地理的条件からして、この条件を使用することはない。
⑩ DES(Delivered Ex Ship)
指定仕向港着渡しのことで、輸入港に船が到着して、その本船から買主に貨物を引渡すときに、売主の費用負担と危険負担が買主に移る。
⑪ DEQ(Delivered Ex Quay)
埠頭渡しのことで、売主は輸入港に貨物を陸揚げするところまで費用と危険を負担する。通関手続きや関税の納付は、買主の義務となっている。
⑫ DDU(Delivered Duty Unpaid)
指定向地持込渡し(関税抜き)のことで、売主は輸入地の指定場所(倉庫、工場、事務所等)まで貨物を持ち込み買主に引渡し、この時点で費用負担と危険負担が買主に移転する。但し通関手法及び関税納付は、買主負担とする。
⑬ DDP(Delivered Duty Paid)
指定仕向地持込渡し(関税込み)のことで、DDUの条件プラス通関手続き及び関税納付をも売主が負担する条件である。
海外と輸出入取引で発生する遅延・破損
出来るだけ避けたいことですが、海外と輸出入取引が継続すると、やはり商品が遅れたり、輸送途中で破損することがあります。
このとき、売主と買主の間で原因追及とその費用負担の交渉をすることになりますが、その費用は契約上どちらが負担すべきなのか、売主と買主の当事者間で明確に理解しておかないと交渉も対処にも時間がかかります。
実際には明確になっていても、業務上の処理は簡単ではありません。売主が出荷するときに壊れたものを輸出するはずがないと解釈すると、大半は輸送途中に起こります。
となれば、輸送業者の責任になり、売主と輸送会社との交渉になりますが、売主が自工場から出荷時の梱包状態が完璧なものであったかどうかによっても事態は変わってきます。
その間に買主には破損した商品は使えず、再発注しても当初のスケジュールに間に合わないなど、これらも買主にとっては大きな損害になり、売主に請求することになります。
また、「遅れ」と「破損」以外にも様々な問題が発生します。
Incotermsに関する売主と買主の費用・危険負担表
下記表は、Incotermsに関する売主と買主の費用・危険負担表です。
(注意)海上での輸出入をベースに作成した表です。空輸での輸出入についてはこの表とは若干異なります。
契約書を取り交わすのは必須
日本の企業が海外から商品を海上輸送で購入するイメージです。
輸入側(買主)にとって「遅れ」と「破損」が大きな問題です。このような問題が発生したときに、どちらがどのように対処するか売主と買主とで契約書の条項で明記しておくのがいいです.
しかしながら、海上輸送、航空輸送でも天災や予定が遅れるのは普通のことで、実際はどのようなことが起こるのか誰にも分からなので、契約書としては、「問題が発生したときはお互いに解決に向けて努力すること」の紳士的な文面を契約書に入れるのが精いっぱいです。
失敗例
私が貿易業務で経験した問題は、
ドイツより海上輸送で輸入の油圧器具製品が、航海途中で海の水か浸透し、神戸港に到着したときに錆が発生していた。
原因は、防錆処理を十分になされていなかったのが原因。
その製品の日本での販売予定日が決まっていたが、遅れることになる。
オランダよりトラックシャーシを輸入するが、車体下部のフレームの一部に微妙に亀裂が発生していることが目視でわかる。
このトラックシャーシに架装し展示会に出品する日が決まっていたので、そのまま出品したが、後で返品するか日本側で処分する費用をどうるか売主と交渉に時間がかかった。
原因は、オランダ側の港で、トラックシャーシを大型クレーンで吊り上げて船上に置く際、ワイヤーの重心が悪かったため、一部に負担がかかり亀裂が入ったと保険会社によって結論づけられた。
アメリカから電気製品の付属品紛失。機械製品を木枠梱包した場合、中に緩衝材(クッション)を大量に入れるが、国によってはクッションも様々で、小さい段ボール箱を隙間に入れてくる場合もあります。
付属品が入った箱が同じような大きさだったため、日本側で開梱した際、クッションの箱と間違って捨ててしまったのが原因。
これは、海上輸送、フォワーダーは関係ないので、売主は「付属品は絶対入れた。」買主は「入ってない。」の主張で時間がかかる。その間、その電気製品を使っての社内実験予定日は遅れる。
マレーシアから海上輸送で輸入のアルミ製品の大量の傷。取引を開始して、2、3回目まではこんなことは発生しなかったが、マレーシアのメーカーがコストダウンのために自社から中国へ委託製造に切り替えたため、梱包時に使うクッション材について詳細に指示なく、クッション材が不十分だったのが原因。
そのアルミ製品を使わないと工場の製造工程が遅れるので買主側で費用をかけて傷を研磨して間に合わせる。後で、この費用を売主へ請求するが日本側での費用が高いことで交渉に時間がかかる。
中国から缶に入った潤滑油を海上輸送で輸入するが、日本側で開梱前の木箱梱包状態を確認したところ、フォークリフトの爪で突いた跡がある。開梱してみると、潤滑油の缶が凹んでいて、商品としては販売できない。
このフォークリフトの爪の突き跡の問題はよくあることで、面倒なのは、売主側の工場出荷時についたものか、輸出港でついたものか、または、日本側での通関後についたものか、国内運搬時(トラック便)でついたものか特定するのに時間がかかります。
本来はそのようなことも考慮し完全な梱包、緩衝材などで完璧にしておけば問題は避けられるが、費用がかかるので取引が継続するにつれてコストダウンのために徐々に梱包は簡易になってくるのが現状。
参考事例
JETROで中小企業の輸出入に関する失敗事例を見ることができます。
INCOTERMSについて
インコタームズ(INCOTERMS)で、一般的によく使うのは、EXW、FOB、CIFです。
同系列の企業内輸入に場合は、DDPもあるかもませんが、一般的には海外の相手業者が日本国内の通関含め諸経費などを負担するDDP契約をすることは稀です。
DDU(Delivered Duty Unpaid)
ディーディーユー指定仕向地持込渡し(関税抜き)条件のこと。INCOTERMS 2010で廃止。 輸入地の指定場所で輸入通関をしないで貨物を引渡し、危険負担を移転。関税は輸入者負担。
Incoterms – International Commercial Terms
In order for international transactions to occur in a clear and transparent manner, there must be a set of standardization rules that everyone can know beforehand. Therefore, in 1936, the International Chamber of Commerce created Incoterms (International commercial Terms) in 1936. These international trade terms have as their main objective to clarify the rights, obligations, costs and risks associated with the transportation and delivery of goods.
Incoterms rules are accepted worldwide by governments, legal authorities, exporters and importers as a way of interpreting the most common terms used in the international market. They were created to minimize or eliminate uncertainties that could arise from divergent interpretations of rules in different countries.
Through Incoterms, trade partners define points related to the delivery of merchandise, freight, insurance, packaging, licenses, customs tariffs, handling between terminals, among other issues. When incorporated into the purchase and sale agreements, the terms have legal force.
Since its inception, Incoterms have undergone periodic updates due to the constant improvement of export processes. Its eighth version, called Inconterms 2010, is in effect since the beginning of 2011. The most recent edition decreases from 13 to 11 the number of rules, represented by acronyms of three letters. The Incoterms used to be divided into four categories, but currently they are divided in two, based on the means of transportation of the merchandise.
1 – Incoterms that apply to any transport:
EXW – Ex Works – The seller is limited to placing the merchandise at the disposal of the buyer in his home, within the established period, not being responsible for the clearance for export nor for the loading of the merchandise in any vehicle collector.
FCA – Free Carrier – Seller completes its obligations and terminates its liability when delivering the goods, cleared for export, to the carrier or to another person indicated by the buyer, in the named place of the country of origin.
CPT – Carriage Paid To – In addition to its obligations and risks foreseen for the term FCA, the seller contracts and pays freight and costs necessary to take the goods to the agreed destination.
CIP – Carriage and Insurance Paid To – In addition to its obligations and risks for the term FCA, the seller contracts and pays freight, costs and insurance related to the transportation of the goods to the combined destination.
DAT – Delivered at Terminal – Seller completes its obligations and terminates its liability when the goods are placed at the disposal of the buyer, on or within the agreed period, at a designated destination terminal (dock, terminal container or warehouse, among others), discharged from the carrier vehicle but not cleared for importation.
DAP – Delivered at Place – Seller completes its obligations and terminates its liability when it places the goods at the disposal of the buyer, on or within the agreed period, at a designated place of destination other than a terminal, ready to be discharged from the carrier vehicle and not cleared for importation.
DDP – Delivered Duty Paid Group – Seller completes its obligations and terminates its liability when the goods are made available to the buyer, on or within the agreed period, at the place of destination designated in the importing country, not discharged from the means of transport. The seller, in addition to the clearance, assumes all risks and costs, including taxes, fees and other charges incurred on importation.
2 – Incoterms that apply to sea and inland waterway transport:
FAS – Free Alongside Ship – The seller terminates his obligations at the moment the goods are placed, cleared for export, along the side of the conveyor ship indicated by the buyer, on the wharf or on vessels used for loading of the goods at the port of shipment appointed by the buyer.
FOB – Free on Board – The seller terminates his obligations and responsibilities when the goods, cleared for export, are delivered, packed, on board the ship at the port of shipment, both indicated by the buyer, on or within the date of the agreed period.
CFR – Cost and Freight – In addition to its obligations and risks for the FOB term, the seller contracts and pays freight and costs necessary to bring the goods to the combined port of destination.
CIF – Cost, Insurance and Freight – In addition to its obligations and risks for FOB, the seller contracts and pays freight, costs and insurance related to the transportation of the goods to the combined port of destination.
貿易に関する英文契約書
インコタームズ(Incoterms)は、海外企業との貿易するとき、契約書を作成し締結する際、重要な用語です。
【阪本研究所】 SK laboratory
💠貿易業務サポート💠広告動画制作💠銘板制作販売
代表 Kazuyoshi Sakamoto
Email ➡ kazuyoshi.sakamoto10000@gmail.com
【阪本研究所】 SK laboratory 💠貿易業務サポート💠広告動画制作💠銘板制作販売 / 大阪府八尾市 Email ➡ kazuyishi.sakamoto10000@gmail.com