【阪本研究所】 SK laboratory 代表 Kazuyoshi Sakamoto

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第二次世界大戦 アメリカの敗北 米国を操ったソビエトスパイ

第二次世界大戦 アメリカの敗北 米国を操ったソビエトスパイ

第二次世界大戦の勝者であるアメリカ。しかしながら、ソ連によるスパイ戦争には完敗していた! 


ハルノートの原案を書き、ケインズと競いつつブレトンウッズ体制を形づくったハリー・デキスター・ホワイト、国際連合設立を仕切ったアルジャー・ヒス。彼らは第二次世界大戦後のアメリカの覇権に関与した二人がソビエトのスパイだった!


スターリンと手を結んで戦後体制を築くことを夢想していたフランクリン・ルーズベルト、戦後ドイツに無慈悲な占領政策を強いたモーゲンソー、対ソ外交の失敗を認めざるを得なかったハリー・トルーマンなど。。。


日本人が知らなかった「戦勝国アメリカ」の裏の歴史が詳細に書かれています。



目 次


第1章 モーゲンソープランの非道
第2章 ソビエトに最も貢献したスパイ
第3章 アルジャー・ヒス ヤルタ会談の黒幕にして国連を作った男
第4章 露見したスパイ網
第5章 ルーズベルト・トルーマン体制の破綻
第6章 ワシントン議会が暴いたソビエトスパイ
終章 「戦勝国」アメリカの敗北










今までほとんど報道されてこなかった第二次大戦前後の米国の政権中枢の人々の動きを、とても分かりやすい文章で書かれています。



 大戦時に米国に入り込んだソビエトスパイなど、普ソ連側スパイ達がフランクリン・ルーズベルト(FDR)を通じて世界大戦を準備し、日本を戦争に引きずりこみ、ドイツの戦後処理も手がけ、その後の日独の歴史を大きく変えたスパイであったようです。




先の戦争の原因については非常に多数の人々が論争してきましたが、米国内部の立場から原因を探ったものは多くなかったようです。


米国としては、日独の”悪”の枢軸国側から戦争を仕掛けられた。」それに対して戦ったという単純な見方が都合がよかったようです。


FDR自身および彼の少数の側近が第二次大戦を用意したなどという考え方大義名分をつぶすことになり、米国にとって非常に都合が悪いことになります。


さて、この本に書かれている「ホワイト」と「ヒス」というソビエトスパイは長い間スパイの疑いはあったものの正式にスパイと【ヴェノナ文書】により認定されたのはわりと最近です。



モーゲンソープラン(Morgenthau Plan)について


第二次大戦直後のドイツの非常に悲惨な状況が書かれています。これはFDRの側近のモーゲンソーによる敗戦後の「ドイツ工業解体+農業国化構想」が引き起こしたもので、「モーゲンソープラン」として呼ばれます。



モーゲンソー・プランではドイツを南北に分割するほか、西部に国際管理地域を設けることになっていた。灰色の部分は、フランス・ポーランド・ソ連に割譲される区域であった。





米国による日本の敗戦処理は軍部を廃絶することでしたが、ドイツに対しての場合、米国のは徹底して工業そのものを復興させず、「農業国」にさせようとしたのです。


「モーゲンソープラン」を起草したのがモーゲンソーの部下のやはりドイツ人嫌いのホワイトで(第一章「ドイツ民族への復讐計画」に詳しく書かれています。)


彼は日本を追い詰め、開戦へと導いたハルノートの張本人でもあり、経済畑出身のこのホワイトは本書の前半の主人公となっており、彼の種々の極秘情報漏洩・FDRへの働きかけがソ連側のスパイのチェンバース(米国のジャーナリスト、のちにタイム誌に就職)を通じて行われたことが本書の前半で書かれています。


しかしながら、途中でスターリンの大粛清があり、チェンバースも身の危険を感じてスパイ活動をやめようとし、ホワイトにも一緒にやめようと持ちかけるのですが、「きっぱり僕もやめる」と一応口では約束しつつも、以後も継続して新しい仲介役のスパイ(ゴロスとベントリー)を経由してソ連に一層深く協力します。


チェンバースも、ホワイトもお金をもらってのソ連スパイではなく、当時の共産主義の思想に共鳴してのいわばボランティア的なスパイだったので活動をやめるのは簡単なのですが逆に信念に基づく以上深入りしたら後戻りできない地点まで行ったようです。


チェンバースは結局米国のスパイ網の一部を国務次官補に打ち明け、ソ連スパイ網はFDRによって一網打尽にされるかと予想されましたが、一部のスパイ(ヒス、カリー)はさらに高位高官まで出世します。FDRの親スタリーン感情は容易に推察できます。




FDRは日本ではなく、スタリーンに親近感を終始持っており、将来の国益を損なうことなど全く考慮しなかった。


国家の元首が外国(当時米国にとってソ連はまだ敵国でなかった)との内通者というおそろしい状況であったのです。



米国は今は敵国同士のようでも、以前は支援国ー被支援国の一種の”友好”関係という現象が結構頻繁にあります。もちょろん、その逆の場合もあります。この辺は頭を柔軟にして米国の外交姿勢は中長期的には常に大きく変化する可能性があるものと頭に入れて、これからの物事を考えるべきかもしれません。


米国をみるとき、こちらで想像力を欠いた対応をしていると10年もしないうちに友好関係がなくなったり、大きく変化する質する可能性があります。それほど米国は自らの国益をまず考慮し、外交的に自由な対応を重視します。



  本書は多数活動していたソ連側スパイ達のうちで、「ホワイト」と「ヒス」に焦点をあてています。
米国とソ連がヒットラー潰しのために共闘し、一時期深い軍事協力をしていたこと、第二次大戦後まもなくしてスターリンが圧倒的に優勢なまま東西冷戦となったことなどを本書知ることができます。


また「日本軍の奇襲攻撃の起こる可能性を、フィリッピン(マッカーサー将軍)には知らせたが、真珠湾を守る二人の司令官には知らせていない。」(本書第三章第二節)には非常に驚かされました。



 ハリー・テキスター・ホワイト(1892-1948)


アメリカ合衆国の官僚、ソ連のスパイ。フランクリン・ルーズベルト政権の財務長官であるヘンリー・モーゲンソーの下で財務次官補を務めた。



アルジャー・ヒス(1904-96)


アメリカ合衆国の弁護士および政府高官。国際連合の設立にも関わったが下院非米活動委員会に喚問され、実際にソ連のスパイ活動を行っていた。


  

4人の警察官構想


FDRが第二次大戦後に世界平和のために”4人の警察官構想”(米・英・ソ・中)をもっていました。
4カ国(仏がその後加わる)の軍事力だけで世界を統治しようというのは幼稚は発想ですが、これが国際連合、後の「安保理の理事国」になるわけですから重要な出来事です。


共産党による中国はこのときまだ生誕しておらず、FDRが「国家としてはその存在がまだ心もとない(国民党の)中国」を取ってつけたように加えます。
では、それならばということで英国が、自国の仲間が増えると好都合という理由で、仏を引っ張ってきたようです。このあたりは第3章第4節に書かれています。





ドイツでの「紙幣発行」ベルリンでは50万の女性が売春行為


  第5章は戦勝国英米によるドイツでの「紙幣発行」についてです。当時のベルリン在住のドイツ人すべてを直撃した生々しい問題であり、ソ連側ははっきりと紙幣を武器として認識し、それによりドイツ人の富を一層収奪しようという躍起になっていたことが書かれています。




ソ連側スパイのホワイトは巧妙に軍決定を装って紙幣印刷の原版をソ連に流れるようして、それを元にしてソ連は繰り返し大量に刷り、困窮の極みにあったドイツ国民から富をさらに搾り取ったわけです。


驚くべきことは占領国の紙幣の大量発行が敗戦国の生活苦の女性達に屈辱の状況を生み出していたことです。1946年のベルリンでは50万の女性が売春行為で暮らし、一般婦女子と売春婦の見分けはつかなかったそうです。



ジャーナリストのウィテカー・チェンバース

 


  本書ではIMFの基盤を作った「ホワイト」、国際連合創設で活躍した「ヒス」の他、転向者の「チェンバース」についてもページをさいており、特に第6章はこの本の魅力の中心部分かもしれません。


ウィッテカー・チェンバース(1901-61)


また、登場人物がほぼ全員がユダヤ人であっても、そこに深く言及せず、よくある安易なユダヤ人陰謀論をも意図的に(?)避けて書かれています。



ジャーナリストのウィテカー・チェンバースが48年、米連邦議会で「自分は1930年代に秘密の共産主義者スパイとして活動し、アルジャー・ヒスと名乗る若い国務省職員を知っていた」と証言した。「ヒス」は、ルーズベルト大統領の側近として、ヤルタ会談を仕切った国務省の幹部だった。




 ルーズベルト民主党政権が、ソ連・共産主義勢力による中欧とアジア「侵略」を容認したのは、民主党政権内部にソ連のスパイが入り込み、外交政策を歪めたからではないのか。


 このように考えた共和党の政治家たちは、米国国内に入り込んだソ連のスパイたちを必死にあぶり出そうとした。その代表格が政治家のリチャード・ニクソンや、俳優のロナルド・レーガンなど、後に共和党の大統領になった人たち。


 彼らは「米国にとって最大の敵は、自由を抑圧する共産主義を世界に広げようとするソ連であり、ソ連と組んだルーズベルト民主党政権は間違っていた」と考えるようになっていく。端的に言えば、「アジア太平洋で戦争を引き起こし、世界を混乱させたのは日本ではなく、ソ連とルーズベルト民主党政権だったのではないか」という視点が浮上してきたのだ。


 そして、チェンバースの告発から70年。中国の軍事的台頭を受けて、レーガン大統領の志を引き継いだドナルド・トランプ大統領も「共産主義の北朝鮮や、中国共産党政府こそが米国の敵だ」と考え、国内に入り込んだ中国のスパイたちを摘発していた。